【 第66回全国植樹祭 】が天皇・皇后両陛下ご臨席のもと、この5月17日に小松市木場潟公園で開催されました。
そして両陛下がお座りになられました御席「お野立所」を設計させていただくという貴重な機会に恵まれました。
■この「お野立所」設計者選定にあたっては、一昨年12月に石川県が指名コンペが開催し、翌1月に選定結果通知が届き、採用されました。
その時の応募案です。
■テーマは、「木を活かし 未来へ届ける ふるさとの森」 -森林資源の利活用の促進-
■そのテーマのもと、提案では ”木材トラス構造” を採用し、テント屋根としました。
木材トラス構造を採用したのは、これまでトラス構造といえば鉄骨が多かったのですが、最近は大規模木造建築物が学校や体育館等で評価され始め、トラス材としての木の活用もあり得るのではとの思いで提案致しました。
■また、具体的な計画案作成にあたっては次のことに留意しました。
・求心力のある力強い形態
平坦で広大な式典会場にあっては参加者の意識を引きつける力強い建築形態が求められます。周辺環境に埋没しないシンプルな半球ドームの形状は充分にそれに応えます。
・正面の解放
式典会場は広く平坦です。後方からも内部が見えやすいように正面は大きく開放的であることが求められます。
・明るい内部
5月の日射しは強く、外が明るく内は暗い、というこんコントラストを生みやすい季節です。屋根に半透明のテフロン幕を採用することにより内部に光を拡散させます。天皇・皇后両陛下御席に直射日光が射さなくても充分明るい内部空間が確保できます。
・日射し対策
計画案にて5月の計画地での日影図を作成し、両陛下御席まで直接日射しが届くことのないことを確認しました。
・木の美しさ
テント幕以外はずべて木で構成します。白いあかるいテント生地に包まれた空間では各々の木の表情も美しく現れます。木の表情は周辺環境とも上手く融合すると思われます。
■また両陛下の背面には、石川の建築の特色でもある「拭き漆塗り」を採用した門型額縁と、伝統工芸である金沢金箔貼りの屏風を配置しました。
■採用後、基本・実施設計を経て、いよいよ11月に着工。
そして今年3月に木造トラスが組みあがりました。トラス材が組みあがった時には ”なんとかここまで辿りつくことが出来た” と、少しだけホッとしたのを覚えています。
■そしてその後、大過なく工事も終え、5月17日の当日を迎えられることができました。
両陛下に御着席頂いた時には感無量、そして大きな安堵を覚えたことを想い出します。
写真は両陛下がお手植え、お手撒きされた式典直後の写真です。
今回このような機会に恵まれましたこと、また大過なくその重責を果たせましたことはこれまでの多くの方々の大きなお支えがあったことと心より感謝致しております。
なお、コンペ案作成に当たっては、後輩の STUDIO EF の 七沢基君に多大なご協力を頂いたことを併せて記します。